Project
カンボジア国シハヌークビル港コンテナターミナル
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プロジェクトの概要
カンボジアで唯一の大水深港であり同国経済を支えるシハヌークビル港は、管理運営を1998 年7 月に政令に基づく国営企業として設立されたシハヌークビル港湾公社(Sihanoukville Autonomous Port/PAS)が担っています。PASは2017 年6 月にカンボジア証券取引所に上場し株式会社となりましたが、これにより運営の効率化、国際競争力の強化等を通じて、経営の効率改善や透明性の確保、株主や投資家の信頼確保などが必要となっています。PASの株式はカンボジア政府が75%を出資していますが、我が国を代表する港運事業者である上組が約13%、阪神国際港湾が2.5%の株式を保有しており、本邦企業による貢献も注目されています。
他方、シハヌークビル港は、カンボジアの順調な経済成長を背景に、近年その港勢が急速に拡大しており、特にコンテナに関しては、2024年には1百万TEU を超える取扱量を記録しました。これは従来の取扱能力をはるかに上回る数字で、港内の混雑は激化しており、港湾内にコンテナがあふれかえる状況となっています。
このため、現在、円借款により新たなコンテナターミナル1バースを沖合に整備する工事が進行中ですが、その先の2バース目、3バース目を引き続き整備すべく準備が進んでいます。しかしながら、これらのターミナルの整備が完了するまでの間、既存コンテナターミナルのコンテナ取扱貨物能力がひっ迫することから、既存コンテナターミナルの能力拡充と運営効率の更なる向上が最大かつ喫緊の課題となっています。併せて、新コンテナターミナルを効率的、効果的に運営するPASの体制作りも課題となっています。
シハヌークビル港を巡る日本の協力の歴史は古く、1990年代半ばより我が国による技術協力が継続的に実施されてきました。コンテナターミナルの経営・技術向上を目指した技術協力は2013年~2016年に実施されましたが、その後も貨物量の著しい伸びに応じて新たな課題が続出し、これら課題に対応するため、2018年からフェーズ2が実施され、更に2022年4月からはフェーズ3が開始され、2027年6月までの約5年間のプロジェクトとして現在進行中です。
フェーズ3の前半(2022年5月~2024年6月)では、施設の限られた既存コンテナターミナルの生産性を高め、ターミナルのキャパシティの向上に重点を置きました。特に、KPIと呼ばれる指標を充実し、現場の丁寧な観察と併せ、PASの職員とともに様々な対応策を練り、協議を重ね、実行に移してきました。この結果、ターミナル容量も当初計画していた50万TEUの倍に当たる1百万TEUまで引き上げられKPIの指標も例えば1船当たりの荷役個数も目標値である40個を超えるなど、船社からの評価も著しく改善しました。更に、基幹航路誘致に向けたプロモーションに対する意識改革が進んだほか、脱炭素化を中心とするグリーンポート実現に向けた取り組みも加速してきました。他方、ゲート前や港内の混雑はコンテナ取扱の急増に伴って激化の方向にあり、港湾内外の円滑な交通フローの確保に向けて、税関やトラック会社や通関ブローカーといった港湾利用者を巻き込んだ取り組みが求められているところです。
プロジェクト後半(2024年9月~2027年6月)では、2027年の供用開始を目指して沖合に整備されつつあるコンテナターミナルに重点を移しつつ、新たなターミナルや既存のターミナル、そして背後にあるSEZを如何に効果的に一体的に運営していったらよいか、引き続きPASと協働しながら、カンボジア経済を支えるシハヌークビル港の港勢拡大に貢献していくべく、取り組みを強化していきます。
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シハヌークビル港全景
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コンテナで溢れるヤード
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荷役風景
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ゲート前の混雑
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鉄道によるアクセス輸送
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ヤード運営状況のPASコンテナターミナル部との共同調査
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PAS及び税関とのトレーラー港内待機状況共同調査
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港湾セキュリティに係る打合せ(中央トンビロ副総裁、その右はシンセノ港長)
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プロジェクト実施ユニット会議
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リーダー 三宅光一
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担当者 尾﨑克行
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担当者 吉永稔弘